串俯瞰

松山に一泊した翌日は、串俯瞰の写真を撮るために伊予市へ向かった。

いつもは寝坊するが、この日は目覚ましに飛び起きた。
串俯瞰の撮影対象である予土線は本数が少ない。
上りは一時間に一本程度。下りについては2時間に一本程度しかこない。
上下線が近い時間帯で通過するのは午前10時台。シャッターチャンスを2回作ることができる。
これを逃すことは決してあってはならない。

朝の天気は薄っすら曇っていた。
大丈夫だ、きっと晴れてくると自分に言い聞かせた。

ナビに任せて西へ西へと車を走らせる。

松山の市街地を超えると右手に伊予灘が広がった。
薄っすら晴れてきたような気がした。
道路はガラガラだった。
海沿いの国道378号線を快調に飛ばした。
国道378号線は夕焼け小焼けラインという別名がある。
なるほど夕焼けはきっと素晴らしいだろう。

延々と海を横に車を走らせる。どうやら時間は間に合いそうだ。
目的地が段々近づいてくる。ドキドキしてくる。

目的地へのアクセスについて、万が一このブログに辿り着いた方のために記事を交えながらメモを残しておく。ストリートビュー等を使いながら説明する。

以下、国道378号線から車を停められる場所(ドロップピン)までのアクセス。
https://goo.gl/maps/61dNzYzVKeKq14qWA
(ドロップピンは撮影ポイントではない。)

松山方面から来た場合、串駅を過ぎて少し車を走らせるとT字の交差点に出る。
この交差点を左折する。この交差点は本村(ほんむら)大橋にある。大橋というほど大きくはない。横断歩道の脇に本村という地名の入った小さい標識がある。橋の下は河口部が形成されている。
画像左上の本村橋梁を通過する予讃線を撮ることになる。
左折してすぐ ” Y字路 ” に当たる。右手の上り坂に入り山をぐんぐん駆け上がっていく。

坂道を道なりに、右に左にぐんぐん登っていく。坂道から望む伊予灘の景色もとても良い。傾斜にある果物畑や農家の佇まいがまた長閑な風景とよく合う。

しばらくいくと、右手の白い2階建ての家が見える。
この建物の手前にある脇のスペースに車を停めさせてもらう。

その白い2階建ての建物の向かいに、設備か何かの基礎が打ってある。
このスペースに車を置かせてもらう。
何度か使ってはいるが特に通報されたことはないが、無断で駐車することになるので念の為、ワイパーに連絡先でも挟んでおいたほうが良いかもしれない。
コンクリの基礎にはミニバンくらいまでなら収まるでしょう。
この基礎の向こうは崖になっている。間違っても車が転げ落ちないよう気をつけてちょんまげ。
軽自動車ならばこの先の農道を進むことができるが、車を停める場所はない。
ちょくちょく地元の農家の方が通行するので邪魔になってはいけない。
僕が会った農家の方々はみなさんとても気持ちの良い方で、会うと必ず温かい言葉をかけて下さった。ここからは徒歩で撮影場所までむかう。
長靴を履いていくことをすすめる。農道は湧き水が溢れている。サンダルなどでいくとエライことになる。あと虫よけもね。

車を降りて坂を上がっていくと分岐に当たる。まっすぐ直進する。

待避所がある。このまま直進する。クモの巣が半端ないので小枝でも拾って払って行くと良い。

密林地帯みたいになってくるけどかまわず前進

まだまだ前進

おっと!左手に未舗装の脇道発見。下りになっています。下りていきましょう。
乗上げブロックが目印ですが、今日現在もあるかどうかはわからない。
とにかく左手に注視してここまで歩く。

道なりに折れていく。

奥へ進むと小さな廃小屋らしきものが立っていた。
そこを越えれば急に視界が広がる。
道が舗装され、三脚を立てるには十分なスペースがある。
つまりそこから予讃線を狙うことができる。
一体誰がこんな場所を見つけたのだろう。畏敬の念を抱かずにはいられない。

僕は無事に予讃線を取り終わり、撮影の間奇跡的に晴れた空に深く感謝した。
お約束のコースかもしれないが、串俯瞰を撮り終えて下灘駅へ行ってきた。
下灘駅への距離は、串俯瞰からは車で5分程度だった。

下灘駅はだいぶ人気のスポットのようで、僕が行ってみた時は常に人がいた。
友人同士、家族、恋人同士だろうか、様々な人達が訪れていた。県外ナンバーが多く見られた。
ほとんどの人が、ベンチに座って海を眺めている自分を撮らせていた。鉄板なのだろうか。
それらの不自然さに寒さを覚えつつ、そそくさと下灘駅をあとにして僕はそのまま宇和島へ向かった。
宇和島の街は例にもれず衰退している地方都市の一つであった。駅前の大通りは軒並みシャッターが下り、交通量も人の姿もまばらであった。
宇和島駅には、駅舎に併設されたセブンイレブンが営業していた。
改札を挟んで、開いているのかわからないような大きなレストランがあり、およそ客で埋まることはないだろう店の広さと、ひっそりとした街の様子のギャップが寂寥感を漂わせていた。
駅から少し離れた道の駅で遅い昼食を取った。
さつま汁という郷土料理を使った定食にした。僕にはちょっと難解な味であった。
レンタカーを返却して駅近くのビジネスホテルでのんびりした。
夕方には雨となった。
静かな街に雨の音は心地よく、僕は次第に眠っていた。