富山から松本へ出る途中、奈良井宿へ寄った。
天気予報では、冷たく強い風が吹いたら雷雨に注意しろ、などと言ってはいたが、奈良井宿に着いた頃は気持ちの良い青空だったこともあり、雨が降るなどとは考えもしなかった。
余裕をこいて、蕎麦を食べたり写真撮影などをしてノンビリ過ごしていると、
俄に空模様が怪しくなってきた。
いつの間にか、どこからともなくやってきた怪しげな雲が、瞬く間に青空を覆い、やがて強く冷たい風が襲ってきた。
こりゃ天気予報の言う通りかと、予報を甘く見た自分を悔いているのも束の間、
ポツポツと雨が降り出したかと思うと、ゴロゴロと雷が鳴り出した。
建物の庇の下で雨を避けつつ、懲りずに写真を撮っていたのだが、
雨は止まないどころか強さを増し、大粒の雨は街を容赦なく叩きつけ始めた。
僕は、もはや写真どころではないなと、しばらく屋根のある場所で雨を避けながら、車へ戻るタイミングを伺っていたものの、雨雲で明るさを失った一体は、
いつの間にか日も落ちてさらに暗く、一向に止みそうもない雨に不安が募るばかりだった。
思い切って駐車場まで土砂降りの奈良井宿を突っ走ることにした。
幸い、走れば2、3分で車に着いた。当然ながら全身びしょ濡れとなってしまった。
車の中で素っ裸になって体を拭っていると、カンカンと踏切が鳴り出した。
少し窓を開けてみた。僕は、通過していく特急ワイドビューしなのを意味もなくぼんやりと眺めていた。
奈良井宿を後にして、僕は宿のある松本に向かって雨の19号線を走り出した。