宇和島から中村へ向かう。
予土線9:33発窪川行に乗らなければ、次発は11:42分。
ホテルで目が覚めたのは9:10分頃だったと思う。
「え、間に合うの」
急いで支度をすれば間に合うかもしれない。
でも面倒くさい。
しかし昼間で過ごす所もない。
飛び起きて用意をした。
慌ててチェックアウトをして、駅まで走った。
朝から大きな荷物を背負って走るのはしんどかった。
ギリギリ間に合って電車に飛び乗った。
車内は混んでいなかったが座れなかった。
最後尾に陣取り窓際にもたれかかり、特にすることもなく、無意味に周囲や景色を観察した。
列車はホビートレインという観光用に改造された車輌だった。
僕が乗った車両にはカッパがうようよ塗色されていた。車内にはディスプレイが設置されていて、なぜか恐竜の模型が並んでいた。
やがて列車は唸りをあげて動き出し、ゆっくりと宇和島の駅を後にした。
列車は宇和島を出て、次の駅の北宇和島を越えると山間へと突き進んでいった。
山、川、狭隘な盆地の風景を繰り返す。しばらくすると雨が降ってきた。
どんよりとした空は、何とない景色でも晴れていれば美しいであろう大地を台無しにしていた。
座っている旅行者らしき年配の男性は、CANNONのレフ機にTAMRONの太いズームレンズを首から下げ、しきりに窓の向こうの風景を撮影していたが、果たしてこの旅行の後にこの台無しの風景を写真として楽しめるのかどうかは疑わしかった。
列車が高知県に入り、江川崎の駅で待避待ちをしていると、やはりまたホビートレインがやってきた。
宇和島へ向かう白い車両は高知県側の顔が新幹線を模しており、みな一様に記念であろう写真を収めていたが、僕はその不細工な列車の顔をどうしても撮る気になれなかった。
正午には窪川駅に着いた。
窪川から中村へは、土佐くろしお鉄道に乗っていく。
中村は、四万十市の中心部を成している。
四国の西南にあり、高知の西端に位置する。随分と遠くまでやってきたものだ。
窪川を出たくろしお鉄道は、海岸線に沿うように西へ西へと進んでいった。
天気は悪いままで、どこにでもあるような素朴な風景の連続ではあったが、子供の頃や学生の頃、また社会に出てから、四国の地図を見る度にこの高知県の隅にある土地は一体どんな場所なのかと大きな興味を抱いてはいた。その思いを達しようとしている現実に僕は充分の満足を得ていた。
一時間もすると中村に着いた。中村駅は例にもれず、人もまばらで静かな印象だった。
宿泊するホテルは徒歩で10分ほどの場所にあった。トボトボと歩いていくとすぐにそのホテルはあった。まだオープンして間もないのか、比較的新しい建物であった。チェックインまで2時間もあった。ホテルは物産館とレストランが併設されており、食事を取りお土産を探すことにした。
レストランで、盛り合わせの丼というわかりやすいものをオーダーした。
藁カツオのたたき、生しらす、さばの造りにそれらに卵をのっけたものだった。
青のりをごはんにまぶしたとろろ鰻丼や、塩をまぶした炙り鰹のたたき定食も美味しそうであった。何が決めてかはわからないが盛り合わせを選んだ。
まっこと美味しかったぜよ!
沈下橋や四万十川、足摺岬を観光するべきであったかもしれないが、この天気の悪さで余り動く気にもなれなかった。15時にチェックインするとそそくさと部屋でゴロゴロと過ごした。翌日は高知市へ出て香川へ向かう。